ACERC開所記念特別シンポジウム

【パネリストプレゼン①】
「脱炭素社会に向けたグリーン水素」

ACERC グリーン水素研究ラボ長・教授 光島 重徳

ACERC グリーン水素研究ラボ長 光島 重徳 教授(YNU研究者総覧

 グリーン水素研究ラボ長を務める光島教授はエネルギー関連政策・プロジェクトや石油危機、プラザ合意など近年日本におけるエネルギー産業の転換点を参照しながら、エネルギー価格と供給量がこれまでどのように変化してきたのかを紹介し、 脱炭素のためには非電力分野での再エネ利用技術が鍵になると説明。また将来の再エネ化・電化に向けて、エネルギー生産地および消費地それぞれが持つ課題や、水素エネルギーをインフラとして支える ガスパイプライン整備利用などPower to Gasの課題にも言及、エネルギー変換効率と需給バランシングの重要性を主張しました。

 また水電解水素のコスト構造を取り上げて日本の水電解技術の強み・弱みや今後の技術開発の必要性を解説、現在は「アルカリ水電解及び固体高分子形水電解の高度化について」プロジェクト を通じて30以上の外部機関とオープンイノベーション体制構築を進めていることなどを紹介しました。


光島教授プレゼンテーション

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【パネリストプレゼン②】
「酸化物の多様性を活かした究極の固体高分子燃料電池用酸素還元触媒を求めて!」

ACERC グリーン水素研究ラボ・IAS教授 石原 顕光

ACERC グリーン水素研究ラボ 石原 顕光 IAS教授(YNU研究者総覧

 石原IAS教授はグリーン水素を高効率に電気エネルギーに変換・活用するための革新的な触媒材料開発に向けて進めている研究内容を紹介しました。燃料電池の中でも昨今発電デバイスとして多様な用途に利用されている「固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell) 」の発電効率をいかに改善するかがポイントであると説明。特に、PEFC発電効率を下げている酸素還元反応に着目し、Ti, Zr, Nb, Ta(4・5族)酸化物を酸化還元触媒とすることによって貴金属系触媒の発電性能特性を超える全く新しい触媒材料が開発できる可能性があることを解説し、 NEDOロードマップ2017(2040年目標)の発電性能達成に向けた取り組みを紹介しました。


石原IAS教授プレゼンテーション

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【パネリストプレゼン③】
「リチウムイオン電池が主役となる電動車と自然エネルギーを活用する社会」

ACERC 先進蓄電研究ラボ長・教授 藪内 直明

ACERC 先進蓄電研究ラボ長 藪内 直明 教授(YNU研究者総覧

 先進蓄電ラボ長を務める藪内教授は、各国規制等によって加速する電気自動車普及は必ずしもリチウムイオン電池技術の進化だけではなく、過去30年にわたる大幅な価格低減の実現が最大の理由だったと説明、 今後も自然エネルギーのコスト低減と脱炭素社会実現への期待から、社会インフラとしての蓄電池活用の動きが進んでゆくとの考えを示しました。また自動運転やシェアリングエコノミーが進む新たなモビリティ社会では、 現在よりも低容量で急速充電特性を持つ蓄電技術が求められると指摘し、コバルトやニッケルに代わる安価なマンガンとチタンをベースにした新たな正極材料の研究開発への取り組みを紹介しました。 また今後の蓄電池の汎用化と高機能・多機能化の方向性として、「長寿命電池」「超低コスト・高入出力・高安全電池」「高エネルギー密度次世代リチウム蓄電池」を挙げ、 可燃性有機溶媒を使わない安全・安心な水系リチウムイオン電池の実用化が生み出してゆく新たな社会的価値を訴えました。


藪内教授プレゼンテーション

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【パネリストプレゼン④】
「新規電解液を用いたリチウム硫黄電池の開発」

ACERC 先進蓄電研究ラボ・教授 獨古 薫

ACERC 先進蓄電研究ラボ 獨古 薫 教授(YNU研究者総覧

 獨古薫教授は反応中間体Li2Sx溶出というリチウム硫黄(Li-S)電池の技術的課題を解決するため、これまでの無機固体電解質やポリマー電解質を用いた方法からアプローチを大きく転換し、 溶媒和イオン液体を利用した新規電解液の開発にチャレンジしてきました。このイオン液体によりリチウム硫黄電池正極の溶出が抑制でき、比較的安定的な充放電サイクル・高いクーロン効率による長寿命化が実証ができていることを紹介しました。 また、JST(国立研究開発法人科学技術振興機構)のALCA-SPRING(Advanced Low Carbon Technology Research and Development Program:先端的低炭素化技術開発―次世代蓄電池)研究課題である「次世代高性能リチウム硫黄電池の開発」への取り組みを通じて、 より長寿命・高エネルギー密度なリチウム硫黄電池の開発を目指してゆきたいとの想いを述べました。


獨古教授プレゼンテーション

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